ep8:オービス光らせたらこうなった
意外にも平穏は崩れないものである
そのような感覚に陥るのはお役所仕事というのが淡々としたものだからだろうか
まずやって来たのは停止処分者講習
1万ナンボだか取られるものの真面目な態度を見せ講習最後の試験で最高評価を叩き出すと30日の短期停止処分は短縮されその日1日の停止処分で済むというドル箱制度である
そう、言うまでもなく処分者講習はおまけである
「君免停だからこの日にここに免許を預けにきなさい!あ、ちなみにこの同タイミングでやってる講習受けると短縮されるかもだから見とくといいよ」
みたいなニュアンスが通知書の主である
受けても受けなくてもいいのだ
しかしこれにすがる他はないだろう、ピイピイと苦しげな鳴き声をあげるお財布を押さえつけながら府中免許試験場に向かう
行政処分課は4階
府中試験場はね
このフロアは見渡す限り交通法規も守れない荒くれ者ばかりで、ひとつふたつ下のフロアの合宿免許から戻りたての学生なんかとは縁もゆかりも無い
いかにもやらかしてそうな態度のデカいおっさんやどこ見てんだかわからないまったく運転向いてなさそうな兄ちゃんに混じって列に並び、停止処分に際し免許証を預け、同時に講習の受付を済ませて、指示された教室へ
老若男女、いろんな外っ面の人間が生涯必ず一度は使ったであろう学習机学習椅子に収まっており、皆の共通点はただひとつ、一発免停級の何かをやらかしたってだけ
それはまあ多種多様十人十色、聞いたわけではないが光らせた奴から跳ねた奴だとか、まあ君は跳ねそうだもんね、ええ?!あんたが光らせちゃったの?!なんて
繰り返すようだが、さまざまな容姿年齢の人間が遠い昔の記憶の中にあるような教室に座らされている様子を目で見るにはそれはとても異様で、熱の出た夜に見る不思議の夢のような光景であった
講習の内容、いや内容といってもまあそれはありがちな道交法の復習だとか改めて交通事故の悲惨さの説法だとか試験コースを実走だとか
教官さんも明言するが落とすための試験ではないので最後の試験に出るようなところはしっかりと強調される
この日は受講者全員最高評価の「優」、この教室は全員短期処分なのでつまり全員免停は1日で済んだというわけ
中でも最年長は80いくつのおじいさん、彼も評価は「優」、これにはみんなで拍手、天晴
「府中試験場の4階は行政処分課だけです、皆さんもう二度と4階に上がってこないようにして下さい」
おっしゃる通りです、はい
(このハンコ欲しいよね、「行 政 処 分」って)
最後の最後に「免許は返してもらったけど日付変わるまで停止処分なので乗りません」という誓約書と引き替えに朝預けた免許をゲットし祝解散
めでたしめでたし♡
否ッ!!!
案ずるのはまだ早い
行政処分は回避したとはいえど刑事処分が残っている
それは品のある一通の茶封筒を身に纏いやってきたのであった
書類送検、つまり検察に送られるので検察でも取調べを受けなければなりません
どうやら管轄は被告所在最寄りの検察になるようで、昼下がりの三鷹は武蔵野区検察庁へ
建物内全体が学校の職員室のような雰囲気で落ち着くようで落ち着かない
病院の診察室のような6畳程度のブースで検察官とマンツーマンで取調べは行われる
またここで検察官よりあなたには黙秘権がうんぬんとお決まりの口上の他、あなたが今なりすまし身代わり等ならば今のうちにこの場でうんぬんなどと検察ジョークをかまされてお茶会は開幕
取り調べと言っても腐れ柏警察の腐れお巡りが書いた調書から再度事実確認の上、検察側で裁判官に回す似たような調書作成するといったなんとも退屈な時間である
ちょっと光らせただとかちょっと跳ねたならば裁判は概ね略式になるが、アチアチな違反や事故を作ってしまうと後日普通に法廷に立つことになる
そんなこんなで略式を選んだ私の元には後日裁判所から7と0が4つ書かれた数字列の罰金の払込書が
「払わんとしょうがねえべ・・・」
そう思いながら大人しく郵便局へ向かったのであった
(最後の最後で手元に届く赤切符 額縁に入れて飾ろう)